ゼンマイ男

私の背中には、分かりにくいけれどゼンマイがある。昔は私が青い顔をしていると、誰か親切な人が知らない内にゼンマイを巻いといてくれたものだった。ところが今では、誰も巻いてくれなくなってしまったので、自分でしなきゃいけなくなってしまった。
巻くのを忘れてしまうと、私は全く動けなくなるのだ。そのまま倒れていると、電池式のみんなは私を邪魔者扱いにするので、毎朝、歯磨きの時に必ず巻くことにしている。
最近では、年のせいか腕が背中まで届かなくって困っている。

ねぇ、そこのあなた、私を巻いてくれませんか?