暗闇の鬼

暗闇の中だから
メガネをかけている必要はないよね
暗闇の中だから
派手な服を着ていなくてもいいよね
いやむしろ服を着ていること自体が無意味かもしれないな
暗闇の中だから
本なんて読めないし
また読む必要もないよね
テレビを見るにもリモコンがどこにあるかもわからないし
何がどこにあるのかなんてことも
もうどうでもよくなってきたよ

こういう時にこそ眠ってしまえばいいのだろうけど
かえって頭が冴えてくるもんなんだね
日頃かなり寝不足気味で眠たいはずなのに


あれから
随分歩いてきたけれど
どこまでもどこまでも暗闇が続いているんだよ

突然
自分でも驚くほど大きな声出してみたけれど
暗闇の中に虚しく消えていくだけだったよ

なんだか心までが暗闇になってしまったみたいだな


自分が歩いてきた足跡も
誰にも見られることがないまま
自分が今どこにいるのか
自分が自分であることさえもわからなくなってきたよ


どこからかおまえのにおいがしてきたぜ

なんだか腹もすいてきたようだ

暗闇の中

俺はもうすでに
人間である必要はないのだ