くちびる

顔の中にくちびるがたくさんある。ひとつは嘘をつき、ひとつは唄をうたい、ひとつは愛をささやく。ひとつはお酒を飲み、ひとつはわれ関係なしと口笛を吹く。そのくちびるたちが、花ひらいたように、顔中で一斉にしゃべることはない。みんな無口だから。
口がたくさんあっても本当のことを伝える勇気がなければやっぱり口が無いことと一緒。 と、さらにくちびるが語った。