食パン

これも六歳の頃。保育園で給食の時間に起きたこと。給食を食べている途中に、魚の骨がぼくの喉に刺さってしまったのだ!向かいに座っていた友達に、不安げに「喉に骨が刺さっちゃった」と伝えた。それを聞いて彼は即座にぼくの食パンをわしづかみにして丸めながら、「これをそのまま噛まずに飲み込んだら骨がとれるぞ!」と自信満々な顔。当時幼児のその彼の、とっさの判断とレスキュー隊も顔負けの敏速な行動に感心したのと同時に、丸まった食パンがゆっくりシワシワになりながら広がるのを見て、(その食パンの大きさからして飲み込めないし、さらにあいつがあの手で無造作に丸めたやつだよな)と内心。ぼくは複雑な思いを抱きながら、喉の痛みに耐えようと覚悟を決めたのだった。