シャボン玉
僕らは、シャボン玉の泡の中で、暮らしている。
風が吹いたり、雨が降ったりで、いつこの泡が弾けてしまうのか心配で、ちっともメルヘンな気持ちになれないんだ。
係
ある場所で説明係をしている。ここを訪れるあらゆる人々に、同じことを一日に何万回と説明している。
時々様々な質問を受けることがあり、日々の退屈さを紛らわすことができていたが、やはり質問の内容もまた同じようなもので、退屈さの日々に埋もれてしまっている。
妻に言われるのだが、毎晩、寝言の中にまで仕事と同じ説明をしているようだ。
ではなぜ私がこの仕事をするようになったのか?説明係をしているものの、全く説明できないのである。
顔
僕の顔は、見方によっていろんな人の顔に似ているらしい。だから、いろんな場所でいろんな人に声を掛けられるんだ。
僕のうんざりするこの気持ちを、いろんな人に伝えても、誰もわかってもらえない。
人間だもの
「人間だもの、失敗はつきものさ。」って励まされるたびに、とっても悲しい気持ちになるんだ。
みんなには気付かれてないけれど、一応僕は、高性能サイボーグなんだもの。
毛
鼻毛を抜こうとしても抜けなくて、引っ張ると、どんどんどんどん伸びてくる。ちょうど手品で口から小さな国旗が次々出てくるみたいに、鼻毛はどんどん鼻の穴から伸びてくる。
やっと長い鼻毛が抜けて、ふと気付くと頭の毛がなくなっていた。
どうやら人の毛というものは、血管のように一つに繋がっているらしい。
時計
「あいつ、時計のくせに、ちっとも時間を守らないんだ!」って、ボールペンが言ってた。
普段は先っちょ丸くて穏やかなのに、あれはかなり怒ってたな。
作風
ハニカミ屋のキャンバスちゃんは、画家の彼に見つめられて、いつも顔を真っ赤にしていたんだ。
その頃の彼の作風が、「赤の時代」と呼ばれているのは、そういう理由だったのさ。